今話題の「RPA」実際どうなの?—RPA業界をよく知る2人がぶっちゃけ対談!

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「IT企業のはずがアナログ作業ばかり。それが開発の原点」—嶋田

嶋田光敏(以下 嶋田):今回はお忙しい時間の中、ありがとうございます。この対談ではRPAの現状や未来についてお話いただきながらも、“RPAって実際どうなの?”というところをお話しいただけたらと思います。弊社にとって耳の痛い話も、ぶっちゃけてください(笑)。

進藤圭氏(以下 進藤:敬称略):そうですね。ぶっちゃけましょう(笑)。

嶋田:本題に入る前に、そもそも進藤さんとRPAの出会いって、どんなものだったんですか?

進藤:仕事柄、テクノロジーの動向は常に追いかけていて、RPAに触れはじめたのは2009年くらいですね。最初は自社で開発しようとしていたんです。そのあと2010年代にオンプレミス型のRPAが登場していました。でもね、自社開発もそのRPAもすごく難しかったんですよ。

嶋田:どのへんがです?

進藤:開発型っていうのは、当然プログラマーが必要だし、オンプレミスでもSEが必要だし。もっと簡単に使えるものはないかなって、ずっと考えていました。逆に、嶋田さんはどうしてクラウドRPAの BizteX cobit を開発しようと思ったんですか?

嶋田:前職のソフトバンクで、法人向けのビジネス開発をたくさん手がけていたんです。たとえば電力小売り事業の立ち上げだと、電力は毎日、仕入価格が変わる。だからそれをスタッフにお願いして、毎日調査させ、エクセルに落として、グラフをつくってもらって報告してもらっていた。

進藤:うーん、そこでもうRPAのニオイがする(笑)。

嶋田:あとYahooとのプロジェクトでは、孫さんに「1000回セミナーしろ」って言われたことがあって(苦笑)。そのためのマーケティングセミナー管理ツールや営業管理ツールに入力しないといけなくて、さらには二重入力も発生していて、こんな面倒なことは自動化できないかなって。ITの最前線を走っているソフトバンクですらそうなんだから、世の中にはいっぱいニーズがあるだろうと思ったんですよ。

進藤:それで独立されたと。

嶋田:RPA自体は存在していたんですが、進藤さんがさっきおっしゃったように、当時のRPAはオンプレオンリーでした。これだと使うのが難しい。シンプルにクラウドにしてUIを優しくして、誰でも使えるようにすれば、現場の人たちの単純作業を簡単に置き換えられるんじゃないか、と思ったんです。でも実際に開発し始めると、結構、難易度は高かったですけど。

「ぶっちゃけ、導入企業の4割はうまく行っていないと聞きます」—進藤

嶋田:創業当初から考えると今は隔世の感があって、オンプレミス、クラウド両方のRPAがたくさん生まれています。私たちの BizteX cobitもそのひとつですが、進藤さんはRPAの現状をどのように見られていますか?

進藤:ある報道では、今年中に導入企業5000社に達すると言っていますが、まあそれくらいはいくだろうなと思っています。でも、うまく行っているところはそのうち6割くらいじゃないでしょうか。

嶋田:なるほど。あと4割はうまく行っていない、と。

進藤:大手企業はひと通り、検討期から導入期に入って来ていて、導入初期の会社は、そろそろ成功しているところと失敗しているところに分かれてきているなという印象です。

嶋田:失敗している原因は?

進藤:失敗している会社には分かりやすい共通項があって、それは情報システム部だけが主導しているということ。結局、現場を巻き込めないと多くの場合、費用対効果が合わないんです。

嶋田:オンプレミス型ですか。

進藤:そう。オンプレだけだと合わないことも多い。まずはよくわからず見積もりをとる。で、ここで2つの失敗パターンが生まれる。1つは操作やプログラミングが難しすぎて、現場に展開できずに行き詰るというパターン。もう1つはクライアント型ってつくりやすいんだけど、クライアントを配布するコストが合わないパターン。PCを準備して、キッティングして…。さらに野良ロボットを防ぐための仕組みづくりも必要になってくる。そういうのが間に合わなくて、というのが大手企業でよく聞くパターンですね。

嶋田:SEリソースもかなり必要ですよね。製品開発のコスト、PCのコスト、ロボットをつくったり、管理するSEのコスト。

進藤:そうです。結局、RPAが活躍する場所って現場なんで。そこに全部SEを配置していくんでしたっけ?って話になっているみたいですね。

嶋田:弊社のサービスのコンセプトって、そもそも現場でやっている業務を現場の人の知識で使えるようなRPAっていうのが発想だったんで、極力、製品コストだけで導入できるようにしたかったんです。いわゆるエンドユーザーコンピューティングですね。オンプレとは違ったポジションを取りたいと。

そんな中で、やっぱりオンプレミス製品を導入して、しっかりSEが管理して基幹システムだけに使いながら、2つ目のツールとして BizteX cobit を使ってもらうパターン。いわゆる二刀流ですね。

進藤:うちは今、三刀流(笑)。

「労働集約型ビジネスの明るい未来が見えたのが最大の収穫」—進藤

嶋田:ディップさんには、今年の5月から本格的に導入してもらっていますね。去年の頭には検討してもらっていたけれど、まだその時はご満足いただける機能にはなっていなくて。今は、どれくらいロボット動いてますか?

進藤:ロボットが6台動いていて、20万ステップくらい( BizteX cobit スタンダードプラン)使っています。

嶋田:どんな業務を?

進藤:うちは求人広告の会社ので、一番多いのは広告制作作業ですね。それこそ毎日、何千本という求人広告をつくるんですけど、当然ながらそこには定型のスペックの入力も必要となってくる。たとえば社名に住所、電話番号とかね。その部分に BizteX cobit を使っています。

嶋田:なるほど。それで導入効果はいかがですか?

進藤:我々は今、ありがたいことにすごい勢いで伸びているんです。だけどそうなればなるほどジレンマがあって。それは何かというと、売上が伸びれば伸びるほど、求人広告制作の人員を増やさないといけないということです。労働集約型ビジネスの典型ですよね。

売上に比例して人員を増やしていれば、利益率は一定のままで上がってはいかない。でも今回、BizteX cobit を導入して分かったのは、うまく自動化・効率化することで利益率を上げていけるということです。これは大きな成果でしたね。

「長いシナリオの仕事をさせようとするから失敗する。成功の鍵は“5分以内の業務”」—進藤

嶋田:ところでディップさんは2009年頃からRPAに着目し、最初はうまく行かなかったと聞きました。進藤さん自身が、その体験を「RPAしくじり先生」として講演されていますよね。御社を含め、導入企業はどこにしくじりがちなんですか?

進藤:経験上で言うと、RPAを用いるにあたって、みなさん割と“長い業務”をやりたがるんです。1時間、2時間と、普段手が取られているようなものを自動化したいと。気持ちは分かるんですよ。そのほうが業務改善した気になれますから(笑)。

でもね、それでだいたい失敗する(笑)。手順が長ければ長いほど、いろんなシステムやデータを扱おうとするので、業務のステップの合間、合間にRPAではできないことが起こってくるんです。要求仕様書なんかを頑張ってつくるんですけど、フローを設計しきれずに、結局「これってコストが合わなくない?」って話になる。

嶋田:では、ぶっちゃけ、どうしたらいいんです?

進藤:「5分以内の業務にしたほうがいいです」とよく言います。

嶋田:ひとつのロボットが行う業務を、ですか?

進藤:そう。人間だと3分とか5分とかで終わる作業で、これを何十回も繰り返すような業務が適しています。たとえば、見積もりの依頼とか問い合わせフォームに来たものを毎朝、問屋さんに投げている作業とか…。たった数分の作業を何十回も繰り返すもののほうが、費用対効果は合いやすいんですよ。で、その後1回、自分で試してみる。今はだいたい無料で試せますからね。

嶋田:では一方で、数多くのRPAの中から最適なものを選ぶコツというか、失敗しないポイントはありますか?

進藤:それはね、割と分かりやすいんです。まずセキュリティを重視したければ、基本的に開発言語でプログラミングができて、セキュリティの設定もかなり細かく変えられるBlue PrismやWorkFusionを。

セキィリティはほどほどでいいから、たくさんロボットをつくりたいという人は、BizRobo!を選べばいい。そしてエンドユーザーに使わせたいとなると BizteX cobit かWinActorを使うと。ゾーニングで言えば、こんな感じですね。意図がないまま選ぶとちぐはぐなことになりますね。(参照:RPAカオスマップ

嶋田:お客様の業務が基幹系みたいなものであれば、しっかりSEを入れたほうがいいですけれど、現場のライトな業務で使うと言うなら、BizteX cobit のような現場でちょこちょくつくれて試せるもののほうが相性はいいでしょうね。

進藤:お客様によっては BizteX cobit をBlue Prismに近づけようとする人がいる。そういうのは無理なんですよ。

嶋田:こんな要件定義できないか、こんな複雑なことができないかと言われることもあります(苦笑)。

進藤:2億円になりますけど、よろしいでしょうかって言えばいいじゃん(笑)。

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やがては業種・業界特化型のRPAも登場する!?

嶋田:先日 BizteX cobit が、グッドデザイン賞を受賞したんです。プログラミング知識がなくても簡単操作できるユーザーインターフェースデザインとテクノロジーで「生産性の向上」に貢献した点が評価を受けました。

進藤BizteX cobit は間違いなくUIに優れていると思いますよ。当社ではいろんなRPAをトライアルしていますが、メンバーに任せてロボットを作れたのは BizteX cobit だけです。素人でもつくれるところが利点ですね。

嶋田:ありがとうございます。またまたぶっちゃけを伺いたんですが、これからRPA市場はどのようになっていくとお考えですか?

進藤:基本の主要製品プラスαって世界になっていくんじゃないかと思っています。カテゴリーごとの。僕はWindowsのアプリケーションのような展開に似ているんじゃないかと。エクセルとかパワーポイントとか。

嶋田:そうですね。RPAってある意味、既存のシステムはそのままの場合、そのシステムができないところをカバーしたり、つなぎ合わせて使っていくものなので、既存システムが機能アップしてRPAの機能もカバーしてしまう可能性があるのかなと。

でも、クラウド系のツールがどんどん増えていくことは間違いないので、逆にその間をつなぐ役割としてRPAは生き残っていくのではと考えています。マーケットは山ほどあるんじゃないかなと。

進藤:そうですね。そこは2つの流れになっていくと思っていて、1つは今の使い方、システムとシステムをつなぐという使い方ですね。それからもう1つは、業務自体を特化したRPAになっていくという発想です。たとえば経理専用とか、秘書専用とか、営業専用RPAみたいな。業界・業種特化型はたくさん出てくるだろうなあ。

嶋田:あり得ますね。今後、爆発的にRPAが普及していくためには、価格も重要でしょうね。現在、私たちのプライシングは月10万円〜ですけれど、中堅・中小企業にとっては高いと感じられているところもあります。対応するシステムの幅も柔軟に考えて、もう少し安い価格体系も必要かなとは思っています。

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500円で買えるRPAで爆発的な普及を狙う!?

進藤:だいたいね、中小企業がやっている業務の種類はそんなにない。数パターンしかないんですよ。これを税理士に投げておいてとか、勤怠管理システムからこっちに投げておいてとか。そういう決まりきったロボットをつくって1体500円で買えるとかどう?

嶋田:私たちも将来的にはロボットマーケットプレイスみたいなものをやっていきたいと思っています。テンプレートがどんどんできたら、専門知識がなくても、ロボットをつくらなくてもだれでも自動化できるみたいな世界観が生まれるんじゃないかなと思っているんです。

進藤:人材ビジネスをしている当社の立場からすると、ホワイトカラー以外の領域への進出も期待していますね。工場のマシンアームの世界と手仕事の世界って、かなり距離があるんですよね。そこをRPAで埋められませんかね?倉庫とか、町工場の検品とかが自動化できて月々5万円とか(笑)。そうなると日本の未来は明るい。

嶋田:なるほど。それは面白い発想ですね。私たちも考えてみます。今日はいろいろと貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。

ディップ株式会社 
商品開発本部 次世代事業準備室
室長 進藤 圭(しんとう けい)
【プロフィール】
大学卒業後、ディップ株式会社に入社。営業職、ディレクター職を歴任し、看護師人材紹介「ナースではたらこ」の事業化など、次々と独自視点の新規事業を立ち上げ、成功に導く。自社でのRPA導入の失敗から克服した体験談をもとに、本業のかたわら「RPAしくじり先生」として積極的に講演活動を行っている。

〈会社概要〉

社名ディップ株式会社
企業情報人と仕事を結ぶ、日本最大級の求人サイトと看護師転職サービスを展開
設立1997年3月
従業員数1735名(2018年4月1日現在の正社員数)
事業内容求人情報サイトの運営、人材紹介業
BizteX cobit導入開始2018年5月

※2018年11月5日現在

ディップ・進藤氏の近著、RPA指南書『いちばんやさしいRPAの教本』

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この記事を書いた人

DX hacker編集メンバーが不定期で更新します。
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