近年、企業のDX化が急速に進み、業務効率化やコスト削減の手段としてSaaSの導入が広がっています。
本記事では、BizteXが実施した調査を基に、売上高500億円以上の上場企業1,451社におけるSaaS導入状況を分析し、日本のエンタープライズ企業(※)がどのようにSaaSを活用しているのか、その最新動向や直面する課題について詳しく解説します。
また、中堅・中小企業との比較を通じて、エンタープライズ企業がSaaSをより効果的に導入・活用するための成功要因や、導入時に直面する課題とその解決策についても掘り下げていきます。
※対象の調査レポートでは、売上高500億円以上の上場企業をエンタープライズ企業と定義しています。
SaaSの導入が進む背景・メリット
日本では労働人口の減少が進み、企業にとって生産性の向上が重要な課題となっています。その解決策の一つとして、業務の効率化を図るSaaSの導入が加速しています。
SaaSはクラウド経由でソフトウェアを提供するため、インストールの手間がなく、常に最新の機能を利用できるのが大きなメリットです。これにより、システム運用の負担が軽減されるだけでなく、業務効率の向上やコスト削減にもつながります。
総務省の「令和3年版 情報通信白書」によると、クラウドサービスを導入している企業の割合は68.7%に達し、前年の64.7%から4.0ポイント増加しました。特に大企業ではクラウド活用が一般的になり、SaaSの導入はDXを進めるうえで欠かせない要素となっています。
こうした流れを受け、今後もクラウドサービスの普及とともに、SaaSの導入がさらに広がっていくと考えられます。
>>エンタープライズにおけるSaaS導入状況調査レポート2024年度を無料DLする
日本のエンタープライズ企業におけるSaaS導入状況
調査の結果、日本のエンタープライズ企業においてSaaSの導入が加速している傾向が見られます。
- エンタープライズ企業の50%以上がSaaSを導入
- 1社あたり平均4.9サービスのSaaSを利用
- 業界別では情報・通信業の導入が最多(231社)
特に情報・通信業では、デジタル技術の活用が不可欠なことから、SaaSの導入が積極的に進められています。一方で、銀行業や建設業では、既存システムとの統合やセキュリティ対策の課題から、導入に慎重な企業も少なくありません。
また、SaaSの活用はバックオフィス業務の効率化や業務の自動化を目的とするケースが増えており、特に人事、経理、法務といった部門で導入が進んでいます。今後もDX推進の一環として、多くの企業でSaaSの導入がさらに拡大していくと考えられます。
SaaS導入が進んでいるカテゴリ
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調査の結果、エンタープライズ企業においてSaaS導入が特に進んでいるカテゴリがわかりました。以下で、導入数が多い上位3カテゴリを紹介します。
また、4位以降の具体的なSaaSカテゴリと導入数については、「エンタープライズにおけるSaaS導入状況調査レポート2024年度」に詳しく掲載していますので、ぜひご覧ください。
人事評価・タレントマネジメントSaaS
120社が導入。企業の競争力を高めるためには、適切な人材評価と管理が欠かせません。特に、働き方の多様化やリモートワークの普及が進む中で、従業員のスキルやパフォーマンスを正確に把握し、適切に配置・育成することの重要性が増しています。
近年、正社員・非正社員を含めた雇用形態の多様化が進み、それに伴い公正で柔軟な評価制度の整備が求められています。SaaSを活用することで、評価データの一元管理やリアルタイム分析が可能となり、より透明性の高い人事評価を実現できます。
これにより、企業は従業員の適性を的確に判断し、最適な配置や育成を行いやすくなっています。その結果、従業員のスキル向上やエンゲージメントの向上を促進する企業が増えています。
契約管理SaaS
116社が導入。企業の法務業務において、契約書の管理や承認プロセスの効率化は重要な課題の一つです。特に、デジタル化が進む中で、紙ベースの契約管理から電子契約への移行が急務となり、多くの企業が契約管理SaaSを導入しています。
SaaSを活用することで、契約書の電子化が進み、検索や管理の効率が向上するだけでなく、法的リスクの管理やコンプライアンスの強化も可能になります。特に、取引件数の多いエンタープライズ企業では、契約プロセスの自動化や承認の迅速化が求められるため、業務全体の生産性向上に寄与するSaaSの導入が加速しています。
ワークフロー管理SaaS
104社が導入。業務プロセスの複雑化が進む中で、社内の申請・承認フローを最適化するために、ワークフロー管理SaaSの導入が拡大しています。特に、リモートワークの普及により、従来の紙ベースの申請・承認プロセスでは対応が難しくなり、業務のデジタル化が急務となっています。
SaaSを活用することで、申請・承認プロセスの一元管理が可能となり、業務の可視化や意思決定の迅速化が実現できます。特に、大規模な組織では部署間の連携が必要となるケースが多いため、業務の効率化や適切な承認フローの構築に大きなメリットをもたらしています。
SaaS導入の傾向
BizteXが調査を行った「理想のワークフローを実現する『iPaaS』導入のポイントとは?」のレポートでは、売上規模を問わず広範な企業のSaaS利用データが掲載されています。

こちらのデータと、売上高500億円以上の上場企業1,451社を対象とした「エンタープライズにおけるSaaS導入状況調査レポート2024年度」の結果を比較すると、企業規模によってSaaSの導入傾向に明確な違いがあることが分かりました。
エンタープライズ企業(売上高500億円以上)では、「人事評価・タレントマネジメント」「契約管理」「ワークフロー管理」など、バックオフィス業務の効率化やコンプライアンス強化を目的としたSaaSの導入割合が高い傾向にあります。これは、業務プロセスが複雑化し、標準化や統制の強化が求められるためと考えられます。
一方、中小企業(従業員規模200名未満)では、「チャット・メール・CTI」「オンラインストレージ」「社内情報共有」など、業務の基本インフラを支えるSaaSの導入が進んでいるのが特徴です。導入のしやすさや即効性が求められ、業務改善につながるシンプルなツールの活用が中心となっています。
このように、エンタープライズ企業は業務の最適化や統制のためのSaaSを導入し、中小企業は業務の円滑化を支えるSaaSを活用する傾向があることが分かります。今後も、企業の成長フェーズに応じたSaaSの選定と活用が重要になっていくでしょう。
>>エンタープライズにおけるSaaS導入状況調査レポート2024年度を無料DLする
SaaS導入数が増えることで起きる課題
SaaSの導入が進むことで業務効率や生産性が向上する一方、運用面での課題も増えていきます。特に、データ連携の複雑化、コスト管理の難しさ、セキュリティリスクの増大が大きな課題となることが多いです。
SaaSの導入が拡大するほど、これらの課題を適切に管理し、効率的に運用するための戦略的な活用が求められます。
SaaS間のデータ連携の複雑化
複数のSaaSを導入すると、それぞれのシステムが独立して動作し、データが分散するという課題が生じます。異なるSaaS間のデータ連携が不十分だと、手作業でのデータ移行が発生し、業務効率が低下する可能性があります。
さらに、API連携を活用する場合、専門的な技術力が必要となるため、運用管理の負担が増大する点も課題の一つです。SaaSの導入が増えるほど、データの一元管理やシームレスな連携を実現する仕組みが求められます。
コストの増大と管理の難しさ
SaaSは手軽に導入できる一方で、利用するサービスが増えるにつれ月額費用が積み重なり、予算管理が難しくなるという課題があります。特に、部門ごとに異なるSaaSを導入している場合、全社的なコスト最適化が困難になり、不要なライセンスの維持や機能が重複するSaaSの利用が発生しやすくなります。
これにより、コストの無駄が生じるだけでなく、契約管理の煩雑化や適切な利用状況の把握が難しくなるため、SaaSの利用状況を可視化し、適切に管理する仕組みが求められます。
セキュリティリスクと統制の難しさ
SaaSの導入が増えるにつれ、企業のデータが複数の外部サービスに分散し、セキュリティリスクが高まるという課題が生じます。アクセス権限の管理やデータの暗号化、適切な利用ポリシーの策定が不可欠ですが、すべてのSaaSに対して統一的なセキュリティ管理を行うのは困難です。
その結果、情報漏えいやアカウント管理の不備といったリスクが発生する可能性があります。SaaSの安全な運用には、セキュリティガバナンスの強化や、一元的な管理ツールの導入が求められます。
iPaaSでSaaS導入の課題を解決する
SaaSの導入が進むにつれ、データ連携の複雑化や管理コストの増大、セキュリティリスクの増加といった課題が生じます。これらの課題を解決する手段として、SaaS間のデータ連携をスムーズにするiPaaS(Integration Platform as a Service)が注目されています。
- 異なるSaaS間を簡単に統合できる
- データの一元管理が可能
- API連携の専門知識が不要で、現場で設定・運用が可能
特に、SaaSの導入が進んでいる企業では、iPaaSを活用することでデータの断片化を防ぎ、業務効率の向上が期待されます。
ここでは、BizteXが提供するiPaaS「BizteX Connect」について詳しく解説します。
iPaaS「BizteX Connect」ならAPI連携がカンタン
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「BizteX Connect」 は、プログラミングの知識がなくても簡単に利用できるシステム連携ツールです。「プログラミングをゼロへ」をコンセプトに開発され、SaaSやデータベース、RPAなどを直感的な操作で接続・連携できる仕組みを提供します。
APIを利用したシームレスな接続により、安全かつ確実なデータ連携を実現し、業務の効率化を促進します。また、クラウド上でシステム連携を一元管理できるため、変化の激しいビジネス環境においても、柔軟かつ迅速に対応できるワークスタイルをサポートします。
BizteX Connectを活用したSaaS連携事例
BizteX Connectを使えば、複数のSaaSをシームレスに連携し、業務効率化やデータ活用を加速させることができます。以下では、実際の連携事例をご紹介します。
Facebook×Gmail×Googleスプレッドシート×Chatworkの連携例
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株式会社ナハトでは、複数のSaaSを活用した広告データの集計業務において、データの分散や手作業による集計の負担が課題となっていました。そこで、「BizteX Connect」を導入し、広告のインプレッション数、クリック数、出稿金額などのデータを自動取得するフローを構築。これにより、各管理画面を行き来しながら手作業でデータを集める手間が大幅に削減され、リアルタイムで広告成果を一元管理できる環境が整いました。
さらに、データの自動統合によって集計精度が向上し、分析や改善サイクルのスピードも加速。レポートの精度が向上したことで、広告運用の最適化が進み、運用担当者からも高く評価されています。
>>導入事例:Facebook広告運用者の分析精度向上と時間的コストの削減を実現
ChatPlus×kitnone×LINE WORKSの連携例
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プロマスト株式会社では、購買部の申請業務において、複数のSaaSを活用する中でデータの分散や手作業の負担が課題となっていました。そこで、「BizteX Connect」を導入し、kintoneやLINE WORKSと連携することで、チャットボットを活用した月700件以上の見積書作成フローを効率化。これにより、繁忙期でも残業時間が大幅に削減され、入力ミスや確認漏れの防止にもつながりました。
さらに、データの自動統合によって業務の流れがスムーズになり、社員1人あたりの生産性が1.5倍に向上。加えて、業務の標準化が進んだことで新入社員の教育期間が従来の3カ月から1週間に短縮されるなど、大幅な業務効率化が実現しました。SaaS同士の柔軟な連携により、現場ではさらなる自動化の提案が挙がるほど、導入の効果が高く評価されています。
>>導入事例:iPaaS連携による見積り業務の自動化により、社員数はそのまま年商が1.5倍に成長
\マウスのみでサービス連携を実現/
BizteX BPaaSならDX人材の育成までトータルサポート
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「BizteX BPaaS」は、RPA、iPaaS、AI-OCRといった自動化ツールを活用し、業務の自動化だけでなく、業務プロセス全体の最適化を実現するサービスです。設計から運用、保守に至るまで、専任の担当者が一貫してサポートし、DX推進に必要な人材育成も支援します。
そのため、社内にノウハウを蓄積し、自社での運用基盤の構築を促進することができます。
BizteX BPaaSの事例
BizteX BPaaS導入実績の中でも活用頻度の高い受発注業務の自動化事例をご紹介します。
受発注業務をBizteX BPaaSで自動化した図

この企業では、ガルーンから受注伝票をダウンロードし、仕分け・印刷・ERPシステムへ入力する作業を、外注制作のRPAで自動化していました。しかし、コスト削減と内製化の方針転換により、自社でRPAを運用する必要が生じました。
従来のRPAは操作が複雑で外注依存が避けられず、サポート費用の高騰も課題に。そこで、簡単に運用できる「BizteX robop」を導入し、トライアルを実施。その結果、現場から高評価を得て本格導入が決定しました。さらに、BizteX BPaaSのサポートによりスムーズな移行と社員教育を実現。
これにより、SaaS間およびローカル環境とのデータ連携が最適化され、業務の一元管理が可能に。RPAの内製化も加速し、コスト削減と柔軟な業務運用を実現しました。
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まとめ
本記事では、日本のエンタープライズ企業におけるSaaS導入の最新動向を分析し、企業規模や業界による導入傾向の違い、特に導入が進んでいるSaaSカテゴリ、そして直面する課題について解説しました。
SaaSの活用が進むことで、業務の効率化やコスト削減といったメリットが得られる一方で、データ連携の複雑化、コスト管理の難しさ、セキュリティリスクの増大といった課題も浮き彫りになっています。これらの課題に対しては、iPaaSやRPAを活用したSaaS間の自動連携が解決策として有効です。
今後も、企業の成長フェーズや業務特性に応じたSaaSの適切な活用が求められます。より詳細なデータや業界別の分析結果については、「エンタープライズにおけるSaaS導入状況調査レポート2024年度」をダウンロードしてご覧ください。