BPSとIPOの違いとは？業務改善手法を徹底比較

企業の業務効率化を支える手段として、BPS（ビジネス・プロセス・サービス）は広く活用されています。

一方で、業務が複雑化し、部門をまたいだ連携や柔軟な対応が求められるなか、従来の枠組みでは対応しきれない課題も見られるようになっています。

こうした背景から注目されているのが、業務プロセス全体を見直し、設計から改善までを包括的に最適化する「IPO（インテリジェント・プロセス・オーケストレーション）」です。

本記事では、BPSとIPOの違いを整理しながら、企業がどのような観点で次の業務改善手法を検討すべきかを解説します。

BPS（Business Process Service）とは？

BPS（ビジネス・プロセス・サービス）は、企業の業務の一部または全部を、外部の専門業者が代行する仕組みです。従来のBPO（ビジネス・プロセス・アウトソーシング）をベースに、ITツールや業務ノウハウを活用して、より高度な効率化・標準化を支援できる点が特徴です。

近年では、SaaS型クラウドサービスを用いた「BPaaS（Business Process as a Service）」など、よりシステム化された提供形態も登場し、BPSの定義や形態も多様化しています。これにより、幅広い業種・業務において、柔軟な業務代行が可能となりつつあります。

一方で、BPSの多くは、あらかじめ定められた業務フローを正確に遂行することに重きが置かれており、業務の設計や導入後の改善・保守といったプロセス全体を包括的に支援する形にはなっていないケースが大半です。そのため、「業務の遂行」はできても、「業務そのものを変える」ことまでは対応の範囲外となる場合があります。

こうした背景の中で、BPSに続く次の選択肢として注目されているのが、業務プロセス全体を再設計・最適化するという発想を持つIPO（インテリジェント・プロセス・オーケストレーション）です。

IPO（インテリジェント・プロセス・オーケストレーション）とは？

IPO（Intelligent Process Orchestration）は、企業内に存在する複数の業務プロセスを部門横断で再編成し、全体最適を実現するための次世代型業務改善ソリューションです。従来のRPAやiPaaS、BPaaSといったツールやサービスが、業務の一部や特定タスクの効率化にとどまるのに対し、IPOは業務全体の構造を見直し、変革することを目的としています。

最大の特長は、単なるツール導入や業務代行ではなく、「業務プロセスそのものの設計から改善までを統合的に担う」という点にあります。現場がツールを覚えて使いこなす必要も、業務フローを一から設計し直す必要もありません。

IPOでは、AI・RPA・iPaaSといったテクノロジーに加え、業務設計・運用の専門知識を持つ外部チームが一体となり、企業固有の業務構造に合わせてプロセス全体をオーケストレーション（再編成）します。

このオーケストレーションの中核を担うのが、以下の3つの要素です。

• プロセス インテリジェンス：AIと人の知見を活かし、最適なフローを可視化・設計
• ヒューマン・イン・ザ・ループ：自動化では対応できない判断を人が柔軟に補完
• クロスプラットフォーム統合：クラウド／オンプレミス／業務アプリを横断し、情報と業務のつながりを再構築

これによりIPOは、従来の業務改善手法ではカバーしきれなかった部門横断・複雑・非定型なプロセスにも対応可能で、しかも導入後の運用・改善までを含めた「業務変革のサイクル」を継続的に回すことができます。

下記ではより詳しくIPOについて解説しています。
>>インテリジェント・プロセス・オーケストレーション（IPO）とは？

BPSとIPOの違いを比較

BPS（Business Process Service）とIPO（Intelligent Process Orchestration）は、どちらも業務効率化や外部委託を含む枠組みですが、そのアプローチと目的には決定的な違いがあります。

BPSが「決められた業務を効率よく任せる」サービスであるのに対し、IPOは「そもそもその業務設計が最適か？」という視点から見直し、再設計・実行・改善までを一貫して担うソリューションです。

下記の比較表では、両者の特性と導入判断におけるポイントを整理しています。

比較項目	BPS（Business Process Service）	IPO（Intelligent Process Orchestration）
業務範囲	業務の一部または全部を外部に委託	業務全体を再設計・最適化
主体	委託元企業が設計・改善方針を決め、外部は実行を担う	外部の専門チームが設計から改善まで一貫して担う
技術構成	人手主体＋一部ツール活用	AI・RPA・iPaaS＋人の知見を統合
柔軟性	ルールベース・定型業務向き	部門横断・複雑業務にも対応
改善スタイル	主に定型フローを標準化し、決められた手順で運用を実施	継続的な分析と改善をテクノロジーと人が自律的に実施
費用構造	人件費主体で高コスト	サブスク＋従量課金型で柔軟に調整可能
提供形態	アウトソーシング中心	クラウドサービスと人的支援を組み合わせた統合型

このように、BPSが「業務を任せる」枠組みであるのに対し、IPOは「業務全体を見直し、変革する」ための枠組みであることが分かります。

ここからは、より具体的にそれぞれの違いを深掘りしていきましょう。

テクノロジー活用の範囲

BPSでは、人手によるオペレーションや、SaaSなど既存ツールを活用した標準業務の処理が中心です。個別の業務にツールを組み合わせることで効率化を図りますが、ツール同士の連携や最適な構成設計までは踏み込まないケースが大半です。

一方IPOでは、RPA・AI・iPaaSなど複数のテクノロジーを横断的に組み合わせ、業務プロセス全体をオーケストレーション（再編成）します。単一ツールに依存せず、目的に応じた柔軟な構成が可能な点が大きな特長です。

対応できる業務の複雑さ

BPSは、あらかじめ定義されたルールに基づく定型業務や単一部門内の作業に適しています。業務の属人性や例外処理が少ないほど導入効果が見込まれます。

しかし、業務が部門をまたぎ、プロセスが複雑・多段階になると、BPS単体では対応が難しくなります。IPOは、AIと人の判断を組み合わせた柔軟な設計・運用が可能なため、非定型業務や部門横断の業務にも対応できます。

業務設計と改善の主体

BPSでは、業務設計や要件定義を委託元企業が担い、委託先はその設計に基づいて作業を代行する形が一般的です。そのため、自社に業務構造を整理・設計するノウハウが必要とされます。

一方IPOは、設計・構築・運用・保守・改善までを一貫して外部の専門チームが担うため、現場が詳細な設計を行わずとも、業務全体を見直しながら最適な形に落とし込むことができます。

最適化のアプローチ

BPSは、業務の一部分を効率化することを目的とした“部分最適”型のサービスです。効果は限定的であり、既存の業務フローそのものに手を入れることは基本的に想定されていません。

対してIPOは、業務プロセス全体を再設計し、継続的に改善していく“全体最適”の発想に立脚しています。複数部門にまたがる業務の流れを再編成する「オーケストレーション」の考え方に基づき、業務構造そのものの変革を目指します。

なぜ今、BPSではなくIPOなのか

多くの企業で業務のデジタル化が進む一方、現場は複雑化・属人化の課題を抱えています。こうした状況下では、単に業務を外部に「任せる」だけでは、持続的な成果を生むことが難しくなっています。

BPSの一部は確かに柔軟性を持ち始めており、“進化型BPS”と呼べる形も出てきています。しかし、それを体系化し、ソリューションとして確立したのがIPOです。

ツール、プロセス、人を組み合わせ、プロジェクトベースではなく業務ベースで変革を起こすこの手法は、今後の業務改善の新たなスタンダードとなるでしょう。

IPOという概念をサービス化した「インテリジェント フロー」

BizteXが提供する「インテリジェント フロー」は、業務プロセス全体を再設計・最適化するIPO（Intelligent Process Orchestration）の考え方を、企業の現場に実装するためにサービス化したものです。

30,000件を超える自動化実績を活かし、業務の分析からフロー設計、構築、運用、改善までをワンストップで代行。クラウド・オンプレミスを問わず既存システムとも柔軟に連携しながら、部門横断・複雑な業務フローの自動化をスピーディーに実現します。

単なる業務委託やツール導入ではなく、「プロセス全体の変革」を支援する点で、従来のBPSやBPaaSとは一線を画します。

インテリジェント フローを支える3つの中核機能

＞＞インテリジェント フローとは？IPOの仕組み・導入効果・RPA/iPaaS/BPaaSとの違いを解説
＞＞インテリジェント フローで業務改善が加速する5つの理由と導入効果

まとめ

BPS（Business Process Service）とIPO（Intelligent Process Orchestration）は、いずれも業務の効率化を実現する手段として活用されています。

特にBPSは、業務の一部を外部に委託することで、作業負荷の軽減や運用の安定化に貢献してきた有効な選択肢です。

一方で、昨今の業務は、部門をまたいだ連携や複雑な意思決定を含むケースが増え、単一の業務効率化だけでは対応しきれない局面も見られるようになっています。

こうした課題に対応するには、業務全体を見直し、設計から改善までを継続的に最適化できる新たな考え方が求められています。それが、BizteXが提唱するIPOという考え方です。

BPSの定義や適用範囲はサービス提供者によって異なりますが、IPOは、プロセスの分断を越えて業務全体を再構築することで、より柔軟かつ持続的な業務改善を可能にする“全体最適型”のソリューションとして位置づけられます。

今後、業務の変化スピードがさらに加速する中で、部分的な効率化にとどまらず、構造的な業務改革を見据えた選択肢として、IPOが果たす役割はますます大きくなるといえるでしょう。