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RPA(Robotic Process Automation)とはどんな技術なのか
「RPAが業務効率化に効果的である」と耳にするが、RPAが具体的にどんなものなのか今ひとつ想像がつかないという方に向けて、この章ではRPAの仕組みについて理解を深めていきたいと思います。RPA導入時や商談前の前知識として参考にしてみてください。
IT知識不要。ソフトウエアに組み込まれたロボットが定型業務を効率化してくれる
そもそもRPAとはどんな技術なのでしょうか。RPA(Robotic Process Automation)を意訳すればロボットによる(作業)工程の自動化となります。ロボットと言うと現在、一部、工場などで利用されている人型のロボットを想像しがちですが、RPAは主に、PCなどで処理するバックオフィス業務などのデスクワークをソフトウエアに組み込まれたロボットが代行する技術や概念を指します。
具体的に言うと、RPAツールに任せたい作業をパソコン上で実践すると、RPAツールが操作手順をRPAツールの動作ルールに置き換えて記憶。次回以降、その作業をシナリオに基づき代行してくれるイメージです。ポイントは、シナリオ作成にあたり、操作する担当者側にプログラミングの知識が不要な点です。画面上でシナリオを作成・修正ができるため、極端な話、業務を把握していれば、非IT部門の担当者、あるいはIT部門が設置していない企業でもRPAは導入しやすいのは、大きな特徴と言えるでしょう。
もう少し具体的な実務例を挙げてみましょう。RPAで膨大な数の顧客情報から営業ルートをまとめたいケースの場合、Excelなどにまとめられた顧客情報から仮に顧客名と会社名と会社情報を抜き出します。続いて、会社の情報をマップサイトなどから探し出して抜き出し、マップ内から範囲指定して画像で切り取り。これを指定の管理ファイル内に担当者名/会社名/地図情報と一括して保存してくれます。
なお、RPAの処理速度は業務内容などにもよりますが、一般的に人間の3倍とも言われており、1日8時間労働で計算した場合、人が3日かけて作業する内容を1日で処理してくれることになります。同時にロボットが処理するにあたり、人が作業するケースと比較して、
- 正確に処理できる(ヒューマンエラーがない)
- 疲れないため、作業中に仕事のムラがない
といった利点もあります。
▼RPAの活用例
- 交通費精算、請求書データの入力、問い合わせ内容の転記
- ターゲットリスト作成、SFA入力、広告レポート作成
- 顧客データ収集、在庫状況の確認、商品情報の更新
- 新入社員・新規職者のアカウント登録
- 伝票入力、支払対応の実行、反社チェック
RPAが脚光を浴びている背景とは
RPAそのものは国内でも2017年頃からバズワードとして取り扱われていましたが、ここに来てその技術にさらに注目が集まっているのはなぜでしょうか。MM総研の調査によると、2019年11月現在で国内のRPA導入率は社数ベースで38%となり、2018年6月時点で22%であったことからおよそ1年半の間で16ポイントも増加したことになります。
このようにRPAの導入が急速に進む背景のひとつとして、特に日本の場合、少子高齢化による生産年齢人口の減少が挙げられます。そんな状況下で企業がそれこそ少ない人数の中でどう生き残っていくのかを考えた場合、今まで人が行っていた事務作業や反復作業をRPAに代替してもらうことで、労働者一人あたりの生産性を向上させたいと考えている企業が増えてきている結果とも言えるでしょう。
さらに、公益社団法人 日本生産性本部による「労働生産性の国際比較データ」によると、労働者一人がどれくらいの付加価値を生み出したかを表す指標である労働生産性において、日本の労働生産性はOECD加盟34カ国のうち21番目で、先進7カ国(G7)に絞れば1994年以降、20年以上も最下位となっています。そういった状況下で、国内企業の国際競争力を強化したい総務省なども、「今後、RPAは不可欠」という観点で、企業へRPAの導入を推進する姿勢をみせています。このような国の後押しも導入が進む理由に挙げられます。
いずれにせよ、RPAの特性を考えれば、慢性的な人手不足に悩む業界や企業にとって、救世主となりうるツールと言う考え方もできます。
RPAが得意とする領域

業務の自動化と聞いて「RPAとAIはどう違うのか」「VBA(マクロ)で代用できないのか」と考える方もいらっしゃると思います。RPAを導入する効果はどこにあるのか。ここでは、RPAとそれらの違い、RPAの得意領域について触れてみたいと思います。
RPAとVBA、マクロとの違い
RPAがなくても、ExcelのVBA、マクロを使った自動集計で事足りる。そうお考えの方に向けて、ここではRPAとVBA、マクロとの違いに触れてみたいと思います。まずはExcelのVBA、マクロについておさらいしてみます。
VBA(Visual Basic for Applications)とは、主にマイクロソフト製のMicrosoft Officeシリーズに搭載されているプログラミング言語で、ユーザーが簡易プログラムを記述して実行することで複雑な処理の自動化などを行なうことができるものを指します。対象はマイクロソフト製のWordやExcel、Access、PowerPointなどです。
一方でマクロとは、あるルールにそって操作すること、そして記録をすることを言います。このマクロでExcelなどの操作を記録すると、その操作内容がプログラム言語に変換されて、プログラムの形で内部に書き残されます。このプログラム自体がマクロであり、そのプログラムを作っているプログラム言語が先に挙げたVBAです。
例えば、Excelのシートのコピー、セルへの記入、印刷といった一連の操作を記録したマクロを作っておけば、あとでマクロの実行をするだけで一連の操作を完了することができます。
ここまで聞くとRPAと一緒だという印象を持つ方もいると思いますが、決定的な違いは、RPAはアプリケーションをまたがって使用できること。他方でマクロは、Officeアプリケーション以外の操作は、そのアプリケーションにマクロ機能がなければ自動化できませんし、マクロ機能がある場合でも、Excelマクロと、その他のアプリケーションのマクロとは別に作成し、実行しなければなりません。加えて、VBAでOfficeアプリケーションを幅広く操作したり複雑な操作を実現することは、実際には高度なプログラミング知識が必要になります。
RPAとAIとの違い
端的にRPAとAIの違いは、RPAは基本的にあくまで人が指示すること、標準化されたルールに沿ってミスなく作業することが特徴です。一方でAIのように学習能力がないため、RPA自らが意思決定することはありませんが、同時に暴走や予想外の行動を起こすケースは限りなく少ないのです。ただし、違う性質のものではありますが、RPAとAIの両者は関係性が高く、後述の通りAIを実装したRPAも提供されています。
RPAにはどんな種類のツールがあるのか

一口にRPAと言っても、各ベンダーが提供するツールなどにはその業務内容や範囲に大きな違いがあります。ここでは特にRPAに興味がある、導入を考えている方に向けて覚えておいてほしい各製品の違いや区分けについて説明したいと思います。
操作しやすく、導入しやすい「デスクトップ型」とは
デスクトップ型とは端的に各自のパソコンで動作するものを言います。属人化された作業やあるいは小規模オフィスなどの場合、各PCの範囲内で十分であるため、デスクトップ型での導入のほうがコスト的にも効果的です。また、機密情報などを取り扱う場合、後述するサーバー型よりも情報漏えいのリスクを軽減できるという点もあります。
組織における”横展開”がしやすい「サーバー型(クラウド型)」とは
サーバー内でロボットが動き、各種データや自動化された業務の作業手順などの大量のデータをサーバー内で一括管理するものです。サーバー内にある大量データを扱えること、全社レベルでの業務効率化が図れることが特徴と言えます。
3段階あるRPAのクラス
先にデスクトップ型とサーバー型で区分けしましたが、RPAにはその業務内容や範囲に応じてclassという段階わけがあります。ここでは3段階に分けられる「class」についてご紹介します。
RPA(Robotic Process Automation)
RPAはclass1に分類されます。
端的に言えば、RPAは定型業務をミスなく遂行。加えて、いくつかのアプリケーション連携が必要とされる単純作業に対応します。
主に、人事・経理・総務・情報システムなどのバックオフィスの事務・管理業務や、販売管理や経費処理などに使われています。
EPA(Enhanced Process Automation)
データの収集や分析に対応するのがEPAです。(class2)
自由記述式アンケートの集計やログ解析、複数要因を加味した売上予測など、様々なデータを基にした分析を自動化する処理に用いられます。
CA(Cognitive Automation)
CAはRPAにAIのような自律的な判断力を備えたものです。(class3)
プロセスの分析や改善、意思決定までを自動化するとともに、ディープラーニングや自然言語処理まで対応できるものもあります。
RPAで実現できることとは? 導入するまでの流れ
RPAを導入することで自社、そして各業務で得られるメリットは何なのか。ここまでご紹介した内容をもとに改めて掘り下げて考えてみたいと思います。
RPAを導入した場合のメリット
RPAを導入することによって自社にどんなメリットがあるのか。現在、自社で抱えている課題と照らし合わせて、これらに当てはまる課題に頭を悩ませていたら導入を検討してみても良いかもしれません。
生産性の向上と人為ミスの防止
RPAが得意とする繰り返し作業などにおいては特に、疲れや集中力の途切れなどにより、人為的なミスが起こりやすいと言えます。一方でRPAはロボットのため疲れや集中力の途切れがないため精度が落ちることがなく、さらに長時間の同一作業においても生産性が下がることはありません。
同時にこれらの作業をRPAに代行させることで、担当者はより付加価値のある作業に専念できるようになります。
人手不足の解消
労働人口の減少に加えて、大手を中心とした優秀人材の囲い込みにより、企業はどれだけ効率的な人配をするかがシビアに求められる時代を迎えています。そんななかで、”ルール通り、繰り返しの単純作業”をRPAに任せられれば、慢性的な人手不足の解消をもたらしてくれます。
コスト削減
上記の通り、効率的な人配をすることで、企業全体の従業員数を無駄なくできる上、余計な採用費を抑えることができます。さらに、残業や土日出社を抑制することにも繋がります。また、これらの作業を含めた効率化を目的とした大掛かりなシステムの導入、開発と比較すればトータルコストを抑えられます。
業務プロセスの見直し
自社にとって最適なRPAツールを導入するためにも、RPA導入前には必ず自社や部署の現状の洗い出しをおすすめします。ここで洗い出した内容をもとにツールそのものの機能や規模、種類を決めましょう。
1. RPAによって自動化したい業務を洗い出す
RPAに代行してもらいたい業務をまずは洗い出しましょう。この際、自動化できる・できないに関わらず一旦すべて洗い出すことが重要です。
2. 洗い出しした業務に優先順位をつけて、実際に自動化する業務を決める
1で洗い出した業務の中から、(A)業務重要度が高く(B)負担が大きいもの、を基準に優先順位が高いものを抜き出して、自動化したい業務を選びます。
3. 要件に沿ってRPAツールを選ぶ
業務を自動化するにあたり、必要な機能やサポートが備わっているRPAツールはどれか検討します。この段階で各社のサイトや問い合わせをしてみるのも手です。
4. 要件にあったものをテスト導入する
一般的に無料トライアルなどで用意されているものがほとんどなので、実際にRPAツールを導入し、自動化のテストを行いましょう。いきなり本番導入せず、ここで自社にあっているのかをしっかりジャッチしましょう。
5. 導入効果を検証する
ツールの使い勝手や自動化した結果などを踏まえ、改めて要件などを定義します。その際、ベンダーの担当者へ本音ベースで相談するのも良いでしょう
6. RPAツールを本格導入する
要件をもとにRPAツールを選定し、ベンダー(販売元)と協力しながら本格的に導入を勧めます。
導入前にはこのようにまずはRPAが何たるかをしっかりと理解すること、そして自社がどんな課題を抱えているのか洗い出すことがとても重要です。また、ベンダーからの説明をうけるにしても、事前にこの部分が明確化されていればより具体的に、そしてより効果的な商談ができるはずです。
まとめ 人手不足、人件費高騰に悩む企業の救世主となりうる「RPA」
2019年に働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法案)が施工されたことで、日本は少ない労働人口のなかで、いかに生産性を向上させていくかが命題となっています。
そんななかで、企業を救うツールの一つとして期待されるのがRPAです。現在では予算に限りのある中小企業でも導入しやすいツールもベンダーが提供されているため、自社の生産性を向上させる一つの選択肢と検討してみてはいかがでしょうか。また、いきなりRPAを全社横断で導入するよりは、まずは事業部、部署単位でスモールスタートしながら様子をみることをおすすめします。
なおBizteXでは、実際にRPAを詳しく検討したい方向けに、無料のRPA活用セミナーを開催したり、実際にご導入していただいた後に動画コンテンツやRPA勉強会にてスムーズなRPAの導入・活用をサポートしております。ぜひ、ご活用ください。
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