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大事なのは顧客基盤。求められる形に進化、変化を重ねて今がある

業務効率化やDXの文脈で各業界のトップにお話を伺うトップインタビューの第4段は、人材サービスを軸に、ヘルスケアやグローバルビジネスなど様々な業種、領域で成長を続ける株式会社ネオキャリアの代表取締役社長である西澤亮一さんです。もともと小さな求人広告の代理店としてはじまったという同社がどのような変革を重ねて今に至ったのか、ここまでの軌跡を西澤社長に伺いました。

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旧態依然とした業界に対して、先を見越した新しいサービスを提供していく

変化のない業界は衰退してしまう

――西澤さんおよびネオキャリアのこれまでについてご説明いただけますか。

西澤亮一氏(以下、西澤氏): 大学を卒業して2000年に投資会社へ就職、同じ年の11月にネオキャリアを取締役として立ち上げて以降、この会社一筋です。立ち上げ当初、当社は求人広告の代理業としてはじまり、1年4か月ほどで4,000万円の赤字が出て潰れそうになりました。その状態で株主と社員から依頼を受ける形で2002年に会社の代表となりました。社長に就任した後は、中途の求人広告の代理店業からはじまり、その後に中途の人材紹介、それらのノウハウを生かして新卒、アルバイト領域まで広げていきました。

業界的には2008年から2013年の間に7兆円あったマーケットが一時的に3兆円まで落ち込み、その後にまた7兆円市場に戻るという大転換期を迎えています。このタイミングで私たちは20億円から120億円まで売上を伸ばし、群雄割拠のこの業界でうまく伸長して、大手との差を縮められたのは大きかったですね。

現在では、これから迎える少子高齢化というテーマに対して、労働生産性の向上をテーマにビジネスを手がけようと早くから考えていました。たとえば働いている人たちの負荷をさげていくということで、保育や介護もそうですし、外国人を受け入れることそうですし、そういった領域を充実させていこうと早くから決心していました。

具体的に言えばキャリアの領域と海外の領域、それからヘルスケアの領域です。当時は特に医療系もやっていましたが、介護保育も含めた医療系の領域もそうです。それからテクノロジーを強化して、HRテックという言葉も、SaaSという言葉もなかった当時に、技術革新のときに波に乗れるように、人材、IT、グローバルの領域で、20個の事業体を作ろうということを決めて、2015年までにこれまでのサイズにしようと目標を立てました。売上が40億円の当時に、これらの業態で550億円までサイズ感を作っていこうと決め、結果、2019年にはこの目標を達成しました。

――20年の経営経験、その途中でリーマンショックを含めた市場、業界の変遷を乗り越えて来られたことを認識しました。人材紹介市場のビジネスモデルは今後どのように変わっていくとお考えですか。

西澤氏: 採用によってお金をいただく「掲載課金型」というこの構造はいずれ成立しなくなるだろうと考えています。そもそも「掲載課金型」は日本独自のもので、リクルートが作り上げたこの最強のモデルを他の大手が追随する形で今があるわけですが、求人情報に特化した検索エンジンを持つIndeedが国内に上陸したことで旧来型の「掲載課金型」は終焉するのではないかといよいよ実感し始めました。

直接的ではないにせよ、この余波は各所に現れていて、たとえばこれまでは新卒の領域でも、昔はリクナビかマイナビの2強だったものが、最近ではワンキャリアなど違ったコンセプトのサービスの企業が台頭してきた。ここ3年くらいで、盤石と言われてきた業界に変化の兆しが見えてきましたね。

そうなってくると当然、私たちの求人広告の領域も徐々に衰退してくのではないかと予想しています。ですから、そういった時に備えて、企業の生産性向上に寄与するようなプロジェクトを今のうちに整備していこうという取り組みをはじめています。

――新しいプレイヤーの登場から変化の兆しを敏感に感じ取っていらっしゃるのですね。企業の生産性向上に寄与するものとは具体的にどのような取り組みをはじめているのでしょうか。

西澤氏: 2016年からマルチデバイス対応のクラウド型勤怠管理システム「jinjer」(ジンジャー)というプロダクトを開発していて、おかげさまでかなりの数の企業に導入していただいています。現在はエンタープライズ向けとして受け入れられているのですが、私たちが本来やりたい世界観としては、勤怠管理を基軸に経営人事という考え方を中小の企業に根付かせましょうという考え方です。

そこで「jinjer」には勤怠はもちろん、人事や労務、給与計算などの機能を持たせているのですが、私たちは「jinjer」を通じて各企業の勤怠情報や残業時間、家から勤務先までの平均時間、居住地、年齢、性別、職歴、家族構成などをAIに読み込ませ、分析、解析させることで、本人とって最適な次のキャリアやポジション、最適な職場、家族に適した保険や金融商品を決められる仕組みを作ろうとしています。

これはつまり、従業員がタレント化していくということで、 「jinjer」 をタレントマネージメントを支援するものとして活用できるものにスケールしていきたい。こういった 「jinjer」 でしか提供できない価値を企業の方に提案していきたいですね。

―― 「jinjer」 で働く人たちのデータが蓄積し、活用することでユーザーにとって更に良いサービス、体験へと展開していくのですね。 「jinjer」 に加えて、ネオキャリアでは最近ではWeb​上で契約に携わる一連の業務プロセスを完結する電子契約サービス「Signing(​サイニング)」も始めていますよね。

西澤氏: 若干、トレンドの後追いとなっていますが、こちらは地方の中小企業を中心に大きなマーケットであること、「jinjer」 と連携させることで唯一無二のサービスを提供できるものと考えています。

次いでご紹介すると「enigma pay(エニグマペイ)」という、従業員が働いた分だけの給与をいつでも、​どこでも受け取り可能にする福利厚生サービスも始めています。こちらは消費者金融等にお金を借りることなく、従業員が安心して気持ちよく働ける環境をつくるためのものの一環です。

一見、関連性、法則性なく複数のSaaSプロダクトを提供しているように見えるかもしれませんが、すべて私たちのなかでは繋がっています。機能や拡張性が硬直的になりやすいワンプロダクトではなく、複数のプロダクトを用意し、それを連携させられるようにすることで、いろんな働き方を企業が提案できるよう支援していく。こういった取り組みで最終的には地殻変動が起きる旧態然の人材業界全体のゲームチェンジを促していきたいです。

人材業界は新しいトレンドやニーズに対応したサービスが台頭

業界はここ3年以内にガラリとかわる

――人材業界がテクノロジーに食いつぶされると危機感をもっているなかで、ネオキャリアはうまく事業領域を展開していますね。成長を続けるためにも、プロダクトライフサイクルの成熟期と成長期のバランスをうまく取っているよう感じます。

西澤氏: 米国では医師、弁護士に加えてキャリアアドバイザーが人生をサポートする3大プロという言葉がありますが、日本におけるキャリアアドバイザーの地位は高くありません。その価値を高めるものの要素のひとつがテクノロジーとの融合であり、これにより目に見える効果をもっと提供していかなくてはならない。

一方でどんなにテクノロジーが進んでも、人材業界では特に“リアル”の部分は重要だと思っています。つまり、IT、AIなどによる分析、情報提示だけはうまくいかないと思っています。制度の高い情報をもとに「あなたに向いている企業はこの5社です」と自動的に提案するだけでは人は満足しない。リアルかつ対面で話しができて、親身になって話を聞いてくれる人間に最終的には信頼が向くのではないか。このように人材ビジネスにおいては、IT、AI化によって今行われているものの代替が生まれるもの、変わらないものが出てくるのではないかと考えています。

――IT、AIの加速により人間の本質的な価値が明確になってくるということですね。そうなる場合、掲載課金型の人材ビジネスにおいてもユーザーニーズは変わっていくのでしょうか。

西澤氏:マーケティングトレンドがマスからターゲティングに変わっていくなかで変化、転換を求められていくと思います。たとえば求人などもYouTubeやTwitterで人を集めたりとかできるわけですから。こういった形で人材を集めたほうが意識も感度も高い人間が集められる。かつ人材を独占できるわけです。

こういった新しいトレンドやニーズに対応したサービスが台頭することで、業界はここ3年以内にガラリとかわるのではないかという感覚は持っています。

――西澤さん自身も積極的にTwitterやYouTubeなどを活用した新しい形の情報発信をされています。その中で、ご自身の経営者としての考えや背景を発信しており、急速にフォローが増えていらっしゃるのを拝見しています。経営者としてこういった取り組みに舵を切るきっかけや意思決定の背景にはどういった思いがあるのでしょうか。

西澤氏:ワンキャリアのワンキャリアライブに我々が出演した際にその反響やアクションに驚かされたのはあります。新しいことに対して受け身というか、リスクを考えて及び腰になっていたなと。忙しい、失敗したらどうしようとか理由をつけて新しいことに取り組めずにいる。そういった構造から大手がどんどん抜かれていくのかなと直感しましたね。

それならば私が先頭を切って、新しい取り組みを始めようと。そこでTwitterプロジェクトというのを自社で目標を立てて始めたり、動画撮影用のスタジオを作ったりしました。そもそも私が対外的なコミュニケーションや社内のインターナルなコミュニケーション役を担っているということもあるのですが。私が行動に移すことで皆を焚き付けていきたいなと思っています。

――人材業界も変わる段階に来ている中で、ネオキャリアはスピード感があり高い実行力もあるように見受けますが、それでも変化が必要ということでしょうか。

西澤氏:ベンチャーか老舗か、企業規模が大きいか小さいかなど関係なく、変わっていくトレンド、ニーズに健全な危機感を持てるかどうかであって、潮目が変わってきているので、私たちも危機感を持って変わろうとしているだけです。

過去にビズリーチが登場した際、通用しないと高をくくっていた大手が今ではダイレクトリクルーティングのジャンルにおいて圧倒的に影響を受けている。人を扱う業種である以上、人のマインドやニーズが変わったら相応の変化は必要ですよね。

変化するのではなく変化に順応していくことが重要

世の中の転換期にタイミング良く会社を変化させられたのが大きい

――多くの危機を乗り越えていらっしゃいる西澤さんにおいて、今回のコロナ含めて、危機に対する考え方を教えてもらえますか。

西澤氏:リーマンショックに東日本大震災、今回のコロナなど、大きな出来事が発生したい際にタイミングよく会社を大きく代える舵取りができていことは運が良かったなとおもっています。

リーマンショックの際は当時150人いた社員が80人まで落ち込み、自分自身の無力さを感じました。その時に現場に戻り、コミュニケーションを図ることで真の課題が見えてきて、ネオキャリアステートメントというミッション・バリューを一新しているのですよね。東日本大震災を通じて、それまで目の前のお客様のことだけを優先していたのを、国や社会を良くするために頑張っていこうと方向転換できた。

これらの何が重要かと言うと、一定の大きさの集団が動き出すと勢いがつくと止まらないという構造もあって、変化に対応しづらくなる。そこで大きなインシデントをタイミングよく迎えたことで、変化、進化できたということです。変化に伴い無駄をなくしたりできた。それは事業や拠点、人の採用もしかり。様々な部分を見直せました。

――コロナのような社会や世の中に大きなインパクトを残す出来事がない限り、変化することは難しいのでしょうか。

というよりは、危機を迎え、会社の状況が良くない際は経営者がどう意思決定するのか重要だということだと思います。会社がうまく回っている時は意思決定を他に任せて、悪い時は経営者が判断する。

状況がうまく言っていない中で経営者がどのような意思決定をするのか。その判断内容によって次なる未来が見えてくる。会社経営ってこの繰り返しなんじゃないかって思っています。

――この先、5年、10年後の人材業界はどうなっていくか。その中でネオキャリアはどのような役割を担っていくべきだと考えていますか。


人材業界においては顧客を持っているということがすごく大事で顧客に対して適切なサービスを提供することがよりシビアに求められてくると思います。どちらかと言えばサービス軸ではなく、顧客軸でこれからを考えていく。お客様に必要なものをきちんと提供していけば、激変する世の中であっても変化にうまく対応していけるのではないか、というのは私たちの考え方です。

世の中のトレンドに自分たちから姿形を変えて適応していく、そんなイメージでしょうか。

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